「ポケット図解 最新 天気がよ~くわかる本」(秀和システム 2006年発行より抜粋)
春一番というと、「春が近づいてきたサイン」として、明るいイメージがありますが、昔は非常に恐れられていた存在でもあります。
漁師を襲った春の大嵐
それは、安政6年(1859年)、旧暦の2月13日のことでした。その日は良いお天気で、元居浦地区(現・長崎県壱岐市郷ノ浦町)のほとんどの漁船が、鯛のはえなわ漁に出ていました。ところが、漁をはじめたその瞬間、突然強烈な南風が吹き荒れ、すべての舟が海の底に沈み、遭難者53名を出す大惨事が発生したのです。漁師の間では、この春の強烈な南風を春一または春一番と呼んで恐れられるようになりました。
それ以来、旧暦2月13日には、元居浦地区では、どんなに天気が良くても出漁せず、海難者を供養し、冥福を祈る行事を行っています。
春一番の原因は?
春の訪れとして明るいイメージがある一方で、漁師にとってはとても怖い存在でもある「春一番」ですが、その原因となるのは、日本海を進む低気圧です。
このような気圧配置を日本海低気圧型と呼びます。この気圧配置の場合、低気圧に向かって南風が吹き込み、春の空気を呼び込みますが、その風は時に強く荒れ狂い、災害をもたらすことがあります。また、冬の間にたくさん積もった雪が、急に吹き込む暖かい空気によって融けて、雪解けによる洪水(融雪洪水)やなだれを引き起こすことがあります。
日本海低気圧が抜けたあとは、再び冬型の気圧配置となり寒さが戻ります。春一番のあとは、暖かくなったり、寒くなったりを繰り返しながら、少しずつ春に近づいていきます。このことを三寒四温といいます。